社内失業者的にみた雇用規制の緩和

 

 

最近ニュースやネットで見聞きする雇用規制の緩和について、いち社内失業者としてもいろいろ考えています。

 

安倍政権は、日本の成長戦略と新しい雇用のあり方を考える上で、「成熟産業から成長産業への“失業なき労働移動”」と「(勤務地、時間、職種などを限定した)多様な正社員モデルの確立」を打ち出した。その目標自体には賛同する人も多いが、それを実現する方法論をめぐっては、様々な議論が巻き起こっている。その代表が、「解雇規制の緩和」だろう。

http://diamond.jp/articles/-/37283 (2013年6月12日 ダイヤモンド・オンラインより)

 

ダイヤモンドオンラインのこちらの記事が、雇用規制緩和と限定正社員モデルのことを分かり易くまとめていました。

いまなぜ解雇規制の緩和なのか その背景&論点を整理する

http://diamond.jp/articles/-/37283

なぜ「解雇規制の緩和」は不要か “できる解雇”と“できない解雇”の視点から考える

――日本大学准教授 安藤至大

http://diamond.jp/articles/-/37951

 

日本は現在雇用規制が厳しく、雇用者側は気軽に人を雇い入れにくい、一度雇うと不要になっても解雇しにくい。
だから成熟・衰退産業から成長産業に労働移動が進まず、余剰人員(社内失業者)がでる一方、という問題。
その問題解決をどうするか、ということで雇用規制の緩和が出てきたが、規制を緩和すればそう単純に解決するのか??
どのような方法で労働移動を円滑にするか?ということが今の論点になっているようです。

解雇規制の緩和を主張する識者などからは、正社員が解雇しやすくなれば、終身雇用・年功序列といった日本型雇用慣行が崩壊し、これまであおりを受けてきた若者、女性、非正規社員の雇用が改善するという賛成意見が挙がっている。

その一方で、解雇規制の緩和に反対する識者からは、失業者が増えるだけで雇用が不安定化する、雇用が短期化するという懸念も噴出している。

http://diamond.jp/articles/-/37283?page=3 ダイヤモンド・オンラインより

 

私個人の考えですが、仕事がそこにないのなら、解雇していただいて構いません。
どうしたって仕事がないのに雇い続けて給料も払い続けろ、とはさすがに言えない。
雇われた側にとっては飼い殺しされ精神を病む、雇った側にとっては人件費の無駄、でなにもいいことがない。
ただ、「じゃあさようなら」と野放し的に解雇するのではなく、雇用当初の契約、約束を踏まえた、雇った側の責任の果たし方に明確なルールがあればいいんだと思う。そして、解雇された側が次に進みやすい仕組みづくり。

企業が、従業員解雇によるリスクを恐れて中途半端な動きをしてるのは、法律による明確なルールまたは従業員との詳細は契約条件がないから、いろんなリスクケースが想定されて、不透明な部分が多すぎて、その結果問題放置になりやすいんじゃないか。社内失業者や追い出し部屋が出来てしまうんではないか。問題は解決されないままうやむやに。社内失業はどんな企業にも起こりえるけど大きいフレームワークで考えたときはそんな発生過程なんじゃないかな。

単純に、雇用規制が緩和されて解雇しやすくなった状況を考えてみる。

仕事があり雇われる → 仕事なくなる → 社内失業化 →→ 解雇 → 転職 → 仕事なくなる → 社内失業 → 解雇 という流れが1つ増える社会になるんだろうか。
よくよく教育もスキル習得もされないまま社内失業し、解雇され、転職できるのか?

なにが恐ろしいか、というと、まだ職能の育っていない若年労働者はいつどこで仕事のスキルを磨いたり得ればいいのかな?学校?

学校を出てピカピカの社会人1年生を雇って、これまで企業は研修に半年かけたり多額の予算を使って手塩にかけて社会人とはなんたるか、から自社のコアな部分まで教え込んできた。でも雇用規制が緩和され、これまでより簡単に解雇できるようになった社員を、果たして今までと同じように教育し育てようと思うだろうか? 「すでに教育され経験も積んだ社員を中途採用したほうが早い」とはならないだろうか?ただでさえ中小企業は人材育成費をけずって即戦力ばかりを求めているというのに。
会社が社員教育をしないのであれば、若年労働者は終業後に教室に通う、セミナーに行くなどしてスキルを高める方法もある。だけど残業をできない社員に圧力をあたえる企業もある。うちの会社もそうだ。
また、この会社で安心して長期的に働ける、という前提があってこそ業界の基礎から企業独自の細かい部分まで学ぼうと思える。商品知識だってつけようと思える。

雇用規制の緩和で労働者の使い捨てが今よりひどくなるような気がする。

そもそも、雇用保障の在り方は、人材育成の在り方とセットになっています。日本の長期雇用制度は、企業内の職業訓練と親和的でした。したがって公共職業訓練制度や失業給付もなしに、ただ解雇規制だけを緩和すれば、余計に現場は混乱し、サービスの質が低下します。また、「解雇するぞ」という圧力のもとで、サービス残業が蔓延し、ブラック企業が激増していくことでしょう。

http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/66477593.html 「人材育成を放棄して雇用規制緩和ではブラック企業がはびこる」とPOSSE代表今野晴貴氏

 

以下、4月24日の朝日新聞に掲載された今野氏の意見に私は賛同します。

引用元:http://takai-sr.blog.so-net.ne.jp/2013-05-02-2>
元サイト:http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201304230609.html

成長産業に労働力を移す。当然のことです。そんなことは別に解雇規制を緩和しなくてもいくらでもできます。

日本の、特に大企業は、不採算部門の社員を育成し直して、成長分野に充当してきた。技術者が営業に異動して伝説の営業マンになったなんていう話も普通にありますよ。社内人材をとても効率的に活用するシステムが機能していたわけです。それもこれも労使間に長期雇用という合意があるからです。職種や勤務地が変わっても日本人はものすごく頑張る。欧米では考えられないことです。

逆に、日本型は企業の命令権限が強大です。配置転換や残業などの命令を聞かなければ解雇されることもある。社員が単身赴任も過労死するほどの残業を受け入れるのも、命令に従えば企業が雇用を守ってくれるという信頼があるからです。しかし命令は自由だけど簡単にクビを切るよというのでは、社員の意欲もそれなりになってしまいます。

私は「ジョブ型」と呼ばれる欧米型の雇用形態に移る必要があると考えています。「ジョブ型」とは、地域や職種、労働時間を限定して採用し、その仕事がある限り解雇できない。逆に仕事がなくなれば解雇できるが、会社の命令権限は限定的で配転などを命じることはできない、という雇用形態です。これなら企業はリスクを恐れずに新産業で人を雇えるはずだし、過重労働も抑制される。

簡単に移行できます。採用時にそういう契約を結べばいいだけです。規制緩和も何も要りません。ただし解雇された労働者を再教育し、労働力を成長産業へ移行させる仕組みを作らねばなりません。これまで企業が担ってきた人材育成機能を一部、国に移すのです。ルールを変えなくても、行政が指針を出して、ジョブ型契約への移行を促していけばいい。20年ぐらいかけて制度を整備し、若い人からジョブ型採用を増やして段階的に雇用環境を変えるのが現実的です。

 

 

人材育成を企業が担わなくなり、国がその役割を担う、延いては自分を自分で育てるようになる、それは厳しい道かもしれないけど賛成といえば賛成だ。

日本人は教育に対して受け身すぎると思う。

義務教育中だけでなく、大学に入っても学生は勉強に意欲を示さない人の方が多い。

自分で望んで進学し、自分で(正しくはほとんどの場合自分の親が)お金を払って受けている授業なのに、いやいや授業に行き、人のノートを参考にレポートを書き、プレゼンテーションの1つも経験せず、レポートも卒論も引用の寄せ集めで「やっつけ仕事」で単位をとって卒業した学生は少なくないと思う。

海外、私の知る限りはアメリカの大学生とは主体性のレベルが違いすぎる。

それがそのまま企業に入り、今度も受け身の教育。会社から与えられた研修日程をこなし、課題が出されればそれに取り組む。それら自動的にふってくる教育がなければ必要最低限のことしか学ばず、新聞も業界誌も読まない。そういう人は会社が教育をしないことを「ラッキー」ぐらいに思ってしまう。
企業が社員教育をせずに若者がスキルをつけられず社内失業者する、というケースもあるが、待ってるばかりじゃなくて社内失業者も企業に対して教育、スキルアップの機会をくれるよう自ら働きかけないといけない。そういう問題意識のある人は、企業が教育をしないようであれば自分で自分を磨くと思う。それでも社内失業するのは会社側の非。

実質、現時点で国がやってる人材育成や転職支援を利用してスキルアップしても、経験値とは別扱いになっている気がする。企業で研修を受けたり経験を積んだ人材のほうが優遇される。企業が教育を放棄し、解雇は促進され、企業外での職能教育は充実せずという状況はヤバい。社内失業者&リアル失業者が増えそうだ。
仮に雇用規制の緩和が行われて、同時にジョブ型の雇用形態が増えれば、私のような専門領域を持っている人間が社内失業することは減りそうだ。ただしリアル失業者になる可能性は増す。どのような状況になっても、結局最後に頼りになるのは自分。仕事がないことが「自分にスキルがないからだ」という単純な理由だけになれば人はみんな努力するし社会や企業を憎まずに自分のスキルアップに尽くし、お金を稼ぎ、生きていく。解雇しにくい面倒な規制だの残業OKの無限定正社員がまかりとおっているから話がややこしくなって労働者も雇う側も自分の置かれたおかしな労働環境についてなにが原因か分かりにくい。

 

正直言えば私の社内失業がこんなに長引いたのも、受け身すぎたことが原因のひとつだ。

会社が教育してくれない、なにも教えてくれない、普通は(前の会社は)いろいろしてくれた、OJT的な仕事も与えてくれた、という考えがどこかにあった。

今思えば受け身すぎた。

しばらくしてそれに気づいて、自分から動くようになったので、もしそれで仕事が作れたりもらえていれば私の社内失業はそこで解決していた。
ところが私のケースは問題がもっと別のところにあって 、業界や業績の衰退で社内失業したわけでもないので整理解雇もできないし
会社にとって解雇するには本当に都合の悪いところである。解雇されないので現職解決したいが私自身がどうもがいても解決が難しい。自主退職するしかない。退職金はいくらもらえるかな?

 

今回この会社で社内失業して学んだこと、頼りになるのは自分だけ、受け身じゃだめ、ある種の忍耐力、等々、キャリアや職能スキルとは全く違うけど、そういうのを活かして次にいけたらと思う。

 

 

 

 

 

4 Comments

キャラメル

いつもながら、わかりやすい的を得た文章に感心してます(^^)同じ社内失業者の私にはどの書きこみも同感し、心に響きます。会社が電力休暇で第一回目の夏休みで家に居ると会社より忙しい家事を^_^します。このギャップ何でしょ。家や近所の井戸ばたでは働くキャリアウーマンと思われます。年齢もそこそこのおばさんです、ウソでも格好付けて、いないと、誰も仕事が無いなんて信じません。これまた、ギャップです。休み終ったら、また書きこみさせて下さい。大会社は休みも結構有るから、女性は、居心地がいいから、結婚しても辞めないし。独身高齢女子も増え、失業者予備軍増殖してる。

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boreout

キャラメルさん
おはようございます。読んでいただいてありがとうございます。
家に帰るとほんと忙しくなりますよね^^;私もです。
周りからはキャリアウーマンと思われていても実際は社内失業…。なんだかちゅうぶらりんな気分ですね。人から「どんな仕事してるの?」と聞かれた時も困りませんか?
私は大企業勤務ではないのでわからないのですが、大企業でも女性の総合職は社内失業されやすいんでしょうか。なんていうか男社会のはざまに置いてけぼりにされた、みたいな。

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キャラメル

>大企業でも社内失業……………
大企業だから失業ニートが増殖してる。
部署毎に子会社作ってるのと同じで、上につく上司によって左右され、暇な部署、徹夜日常茶飯事な部署さまざま。部下は上司を選べない、上司は部下を選ぶ、言う事聞く部下は、自分のそばに置いて、仕事教え使命感と責任持たせ、どんどん成長させ、能力ない上司は、必然的にダメ部署になる。横のつながりもないので、スポットで、人が不足したら外部から派遣社員雇う。遊んでる社員は忙しく働く派遣社員を横目に。羨ましいトオモウシダイ。派遣社員はおそらく忙しいのを手伝う為に来たのに、社員が遊んでると思ってる。おかしな構図。また、男社会の会社は、女性の昇進を長い間しなかった、数年前からは、世の中の情勢に合わせたのか、少しずつ女性の主任、主事、課長と増えた。900人の事業所に、女性課長は一人だけ。、主事、主任は各部署数名ほど しかもみんな15年以上の勤務者。女課長は、私と同じ勤務年数。男子は4,5年勤務したらすぐ主任になれる。全て上の推薦が基本。女性はお茶汲みとしか思ってないのでろくに教育もさせない。全国にたくさんの事業所があるが、どこも代わり映えしない気がする。暇で辞めたいと申し出ても、辞めさせないでしょう。外で言いふらされると
会社のコケンに関わるから。何とかなだめ、居させるでしょう。私は、生活があるから、強く辞めるといえないのがくやしい。あと2年我慢。と思うから、行けるけど、定年、延長して
嘱託なんかで5年も、暇はもう無理。

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boreout

キャラメルさん
なるほどそういう構造なんですね大企業の社内失業…。マジョリティである男性社員ばかりがどんどん派閥や猿山wを作って自分たちにとって居場所のいい空間を作っているとしか思えない。。
そんな状況で暇していると見たくないものも見えてくる、悔しいことだらけですね。あと2年、社内失業の中でもなにか「よかった」と思えるものが1つでも残ればいいものですね。。

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